実は、当事務所では、商店街の中で創業することも起業の一つの手段としておすすめしています。
小平商工会にも所属しており事業者として商店街に接することもある他、住民としても商店街を利用する立場にありますので、自然と行き着いた構想だと言えるでしょう。
さて、これから商店街での創業について簡単にご説明していきます。
商店街とは
商店街という言葉を全く聞いたことがない方はいないでしょう。
では、どういうイメージが浮かびますか?
- 店が並んで賑わっているところ
- 人情味にあふれたところ
- 八百屋さんや魚屋さんの「安いよ安いよー!」という呼び込み声が聞こえるところ
もしくは
- 寂れているところ、シャッター街
というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれないですね。
どちらも間違いではなく、賑わっているところ、もう潰れかけてしまっているところなど、実際にいろんな商店街があります。
ごく簡単に、一般的な定義するとすれば、「商店が集まっているところ」でしょうか。そのままですけど。
ということは、実は東京の新宿や池袋の中心にある繁華街や歓楽街も商店街です。
このイメージで「商店街」という言葉を捉えている人はかなり減ると思います。
もちろん、「庶民的」というイメージが似合わない銀座も、商店街です。
これらは例え話で言っているわけではなく、全部が全部とは言いませんが、きちんと商店街(正確には商店会や商店街振興組合)として組織化されていることがほとんどです。
- 事業主が集合し法人とまではいかなくとも、任意で団体(任意団体)となっているところ(これが商店街全体の約8割を占めます)
- 事業主が集合した上で、組合や一般社団法人などとして法人を立ち上げて運営しているところ
任意団体であっても「会長」という立場の人がおり、商店街振興の補助金の対象にもなり(全ての補助金の対象となるわけではありません)、基本的には事務局の機能も備えているので、そういう形式の区別はあるにしろ、何らかの組織を有していることが大半です。
しかしながら、やはり一般的なイメージである「住人に近く庶民的」というものが一番しっくりきますね。
当事務所がご提案する「商店街創業」もそういう身近な商店街を意識しています。
オフィスビルもなく、大きな商業施設もない、個人事業主を中心として寄り集まったお店が立ち並ぶところ、これを商店街と呼んでいきましょう。
「あなたの町の、○○商店街」
このキャッチコピーで違和感がないようなら、それがこの記事では「商店街」です。
ちなみに、新宿、渋谷、池袋や銀座、丸の内のような大都市についてはオフィス街、繁華街と呼んでいきます。
商店街の現状
現在、商店街はネットショッピング(Amazonや楽天などが代表的)や大手物流チェーン(イオンやセブンアンドアイなどですね)の台頭におされて不遇の時間を過ごしているところも多いです。
そして、なんとかそれを打破しようと自治体や商工会、その他団体などが知恵を絞って商店街や地域の振興に力を入れています。
しかし、なかなか現状がすぐに変わっていくわけではありません。
イベントなどは間接的な集客、つまり商店街そのものに足を運ぶきっかけにはなるかも知れませんが、より個店にとっての集客となるように、住民に対して訴求する仕組みを作る必要がありそうです。
これは、事業主の責任というのではなく、平成21年の地域商店街活性化法が「商店街は地域コミュニティの担い手」という曖昧なスタンスを打ち出したからだと思っています。
商店街が「コミュニティの担い手」であることにあまりにも捕らわれると、それは本来、地域住民のために「モノやサービスを提供する担い手」であるべき商店街を構成するそれぞれの個店が、個店として強くなれずにかえって衰退の一途を辿ってしまうのではないかと危惧しています。
つまり、スタートラインは、「個店の活動は決して『まちづくり』や『商店街活性化事業』自体を目的としてはいけない」ということ。
そして目的は絶対に「個店として儲けを出すこと」でなければなりません。
まちづくりや商店街活性化事業を強力な手段、武器とするのはもちろん良いとしても、あくまで目的は「街として」でもなく「商店街として」でもなく「個店として」儲かること。
個店として儲かるということはそれだけ住民のニーズに応えたということですから自然に商店街の利益にもなる、という思考回路です。
なぜ商店街での創業を勧めるのか
そのように、商店街のおかれた現状は、必ずしも良いとは言えません。
ではなぜそういうところでの創業を勧めるのでしょうか。
現在、商店街の個店で、後継者問題に直面しているところが多くあります。
必ずしも、後継者がいないというわけではなく、一応、跡取りにさせようと思えばいなくもないけれども、「最近はこの辺も商売するには大変だし、跡取りにそういう苦労をかけたくない」として自分の代で廃業を検討されている商店主が一定割合いらっしゃいます。
これは、非常に大きな損失です。
確かに、これまで大変な苦労をされてきたとは言っても、その歴史の中で、商売における多くの勘であるとか、知恵であるとかを積み重ねてこられた方がほとんどです。
それが失われる可能性があります。
一方で、これから起業される方は、大半の場合、最近の動向に見合ったアイデアや気概はお持ちです。
これから苦労はあるだろうけれども、とにかく頑張る!というイメージでしょうか。
ここで気づくわけです。
これまで長く商売をやってきた人と、これから商売を始める人が「商店街」の中で一緒になれば、お互いを補完しあう関係になるのではないかと。
商店街としては、新しい風が欲しい、そして、これから起業をする方は、おそらく、これまで長く商売を続けてきた人の経験に基づく勘や知恵が欲しいのです。
新しい起業家が商店街の中で創業してくれれば、それが実現します。
起業家目線で言えば、すぐそこに、長年の経験を持った人がいる環境で事業を進められるのです。
商店街の良いところは、独立した経営者の集まりながらも「地域を盛り上げたい」という共通の目的を持っているということです。
商店会に加盟するかどうかはさておき、自分の会社や店の周りが活気づいていることに越したことはありません。
経営を始めたばかりは「こういう場合、どうしたらいいんだろう。でも、些細なことだし、改まって人に聞くのはなあ」という場面もたくさん出てきますが、そういうときにすぐ聞ける人が身近にいます。
そして、勘や知恵が新たな起業家に受け継がれていきます。
これらこそ、当事務所が商店街での創業をお勧めする理由です。
もちろん、事業の内容や狙う顧客層などによっては商店街という場所がなじまないものもありますが、例えばこちらから顧客に出向いて営業するスタイルであるとか、ネットビジネスなど、事務所や店舗を構えた場所にさほどとらわれない起業をお考えであれば、一考の余地はあるのではないかと思います。