振り込め詐欺救済法とは
振り込め詐欺救済法は、正式には「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」といい、平成20年6月から施行されています。
この法律により、金融機関は被害者が振り込んだ先の口座を凍結(預金引出しや預入、振込をできなくすること)し、申請をすることにより、凍結された口座の残高や被害に遭った額、人数に応じて、被害額の全部または一部を被害回復分配金として受けることができます。
ポイントをいくつかご案内いたします。
★CHECK1★申請の対象となるのはどういう時か
振り込め詐欺やヤミ金との取引などにより、相手が指定した預金口座にお金を振り込んでしまったことが大前提となります。従って、現金でのやり取りは対象ではありません。
また、お金を取り返すための申請は振込先の各金融機関専門部署に対して行いますが、先立って振込先口座が凍結されている必要があります。
最終的には、対象となる預金口座は「預金保険機構」のホームページで公告されます。
多少時間が経っていても対象となっていることがあります。
なお、振込先の口座を「犯罪利用口座」と呼びます
★CHECK2★いくら戻ってくるのか
申請時点でその預金口座(犯罪利用口座)に残っている残高や、他にもその口座を通して被害を受けた方が複数人いれば、その人数などによっても異なります。
もちろん、戻ってくる金額は最大で被害に遭った金額です。
被害者が複数いた場合は、それぞれの被害額に応じて取り戻せる割合が決まってきます。
【例】被害者がAさんBさんの二人で、それぞれ被害額が100万円、200万円だったときで、犯罪利用口座の残高が150万円の場合
(1)AさんとBさんの被害合計額=300万円
(2)Aさんの被害額は、被害合計額の1/3、Bさんの被害額は被害合計額の2/3
(3)犯罪利用口座の残高を、(2)のそれぞれの割合(1/3と2/3)で分ける
(4)Aさんが取り戻せる額=150万円の1/3=50万円、Bさんが取り戻せる額=150万円の2/3=100万円
となります。
★CHECK3★いつ戻ってくるのか
この手続きには口座名義人の権利を消滅させたり申請を受け付けたりする手順があり、それぞれに30日~60日の期間が設けられています。
そのため、被害に遭った時点から少なくとも90日程度要することになります。
ご留意点
被害に遭われた直後の場合、犯罪利用口座を凍結する必要があります。
行政書士が被害者の方を代理して凍結要請を行うことはできませんので、当事務所の場合、提携先の弁護士を紹介させていただくか、ご自身にて凍結の手続きを行っていただく必要があります。
また、申請の対象となるのか及び申請が受け付けられるのか(犯罪利用口座の残高の都合)を調査した結果、申請の対象とならない場合もありますので、ご了承ください。
加えて、必ずしも全額が返ってくるわけではありませんが、私が前職で、振り込め詐欺よりもおおよそ被害額としては小さいヤミ金融事件のお手伝いをさせていただいた経験からすると、それでも数十万円の返還を受けたことはあります。
最後に
被害に遭わない、実際に遭ってしまったら、それ以上の被害を防ぎ、被害の回復に努めることは当然ですが、身近に振り込め詐欺に遭った方がいたら、その心情的なサポートも忘れてはいけません。
特に昔で言う「オレオレ詐欺」については、ある意味思いやりが生んだ悲劇とも言えます。
そして、相手(犯人)は想像を絶するプロです。「自分だけは大丈夫」というものは、一種の幻想に過ぎないと言っても過言ではありません。
誰も詐欺に引っかかりたくて引っかかったわけではありません。ご家族などの身近な人は、それを理解してあげてください。