使い方によっては便利な内容証明郵便。
ですが、内容証明だけでは不十分な案件も多くあります。
その一つに、時効中断があります。
例えば、Aさんという個人がいて、Bさんという個人に100万円貸していたとします。
しかし、何らかの事情でBさんからの返済が滞り、Aさんはちょこちょこ請求書などを送ってはいたものの、そのまま9年が経過しました。
こういう場合、あと1年、つまりBさんからの返済が滞った時点から10年間経過すると、AさんはBさんに対して「100万円返せ」と主張することが出来なくなる恐れがあります。
これは「(消滅)時効」と言われる制度のためで、民法という法律で「せっかく100万円の債権(返せという権利)を持っていたのに、それを10年間もほったらかしにするなんて、もうその権利要らないよね」と決められているからです。
ここで、債権者としてのAさんは「ちょっと待て。その時効が成立する前に、それを中断する。」ということができます。
これを「時効の中断」といいます。
時効の中断の要件は、今回の場合に当てはめて言うと、Bさんが1円でも返済してきた、Bさんが債務があることを認めたなどがありますが、他にも、AさんがBさんに対して返済を求めた、つまり、請求をしたということなどがあります。
ここで問題としたいのは、「AさんがBさんに請求した」ということで、その請求はどういう方法で行ってもいいのかということです。
時効の中断は内容証明郵便だけで充分か否か
さて、この時効を中断させるために、果たして内容証明を相手方に送付して請求をすればそれで良いのでしょうか。
例えば、返済が滞って9年11ヶ月経過した時に、Aさんは内容証明郵便で確かにBさんに請求をかけた、これで時効が中断するのでしょうか。
答えは、「内容証明郵便によって、時効の完成は6ヶ月は伸びるけれども、それでもその時に時効は完成してしまう(返済停止から考えると、10年5ヶ月経過した時点で時効が完成)」ということです。
つまり、内容証明による請求では、時効の完成を6ヶ月間先延ばしにする効果しかないということになります。(さらに、じゃあその6ヶ月が再度経過しようとした直前に同じく内容証明でさらに6ヶ月延長させるということはできません。この方法は一度きりです。)
では6ヶ月間延長されている間に何をすべきか。
最も良いのは、その間にBさんから全額までいかなくとも、返済を受けるということです。これは確固たる時効中断事由となる「返済」に当たるので、時効の進行は完全に停止し、新たにその翌日から10年間は時効が問題になることはありません。
もしそれでも返済が受けられない場合、Bさんに対して「貸金返還訴訟」を提起するか、又は「支払督促」を利用するなど、とにかく裁判上の請求をすることになります。
AさんがBさんに100万円を貸したことと、その全額が返済されていないことを裁判所が認めてくれた時点で、時効は振り出しに戻ります。
とすれば、結局、内容証明郵便だけでは不十分ということになります。
6ヶ月伸びてその間に自分でコツコツ回収できるということであればいいでしょうが、おそらくそういうケースはほとんどないでしょう。
結局、訴訟や支払督促ということを併せて利用していくことになるんですね。
こういう事情もあり、当事務所では、行政書士単体で依頼者の目的が達成できない恐れが強い場合、初めから司法書士や弁護士に相談することを勧め、又は初めから他士業と協力しながら進めていくスタンスを持っています。
誰も時効が6ヶ月延長されて喜ぶことはないと思います。
貸したお金を回収すること、又はせめて、今後のために時効をもう一度10年レベルで伸ばしておきたいという目的があることでしょう。
その目的を士業が見誤って、依頼者の希望が叶えられなかったということがあってはなりません。
当事務所では日頃から専属で気軽に協力できる司法書士や弁護士とのネットワークを築いています。
お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。